世間話
キリバス
アバイアン島
旅行中、現地の人たちと話をする機会は多々あるが、私の語学力の関係上、あまり込み入った話をすることができない。
話すことといったら「今日は良いお日柄ですね」的な、専ら世間話になってしまうのである。

例えば、バヌアツに行ったら
「いや〜、カバ飲んだんですよー、えへへ。」

クック諸島に行ったら、
「いや〜、なまこが一杯いますねー、あはは。」

サモアに行ったら、
「いや〜、サモアのなまこはでっかいですねー、ふふふ。」

ノーフォークに行ったら、
「いや〜、あそこの岩場はクモヒトデだらけでしたよー、hahaha!」

といった感じである。
太平洋諸国は基本的に海しかないので、世間話の内容も、このようなに関連した他愛の無い話になってしまう。

さて所変わって、ここはキリバスはアバイアン島。
所変われど、やはりここにも海しかないので、当然島民達とは海に関する簡単な世間話をするのである。


日本人:「いや〜、ここの海岸にはクロナマコが沢山いますねー。」

キリバス人:「ええ、クロナマコは一杯いますよー。」

日本人:「ここではナマコ食べるんですかー?」

キリバス人:「いや〜、食べませんねー。日本では食べるんですかー?」

日本人:「ええ食べますよー。ナマコ美味しいですよー。」

キリバス人:「ほー、どうやって食べるんですかー?」

日本人:「いや〜、生で食べますよー。ナマコ美味しいですよー。」

キリバス人:「そうですかー。この島の沖では中国船がナマコ漁をしてるんですよー。」

日本人:「そうですかー。ナマコ美味しいですからねー。」

キリバス人:「でも中国の船は白いナマコしか獲らないんですよー。」

日本人:「いや〜、そうですかー。ナマコ美味しいですよー。」

キリバス人:「そうですかー、ははは。」

日本人:「あはは(笑)。」


・・・。


全くもって他愛の無さ過ぎる会話である。
こんな話をしたところで、日本とキリバスの友好関係が深まるわけではないし、お互いの親密度が増すわけでもない。
だって、単なる時間つぶしの世間話に過ぎないのですから。


しかし、事件は起こった。


それは、私がアバイアン島を去る日のことであった。
その日の朝、私は村人に呼ばれたのである。

キリバス人:「舟さん、渡したいものがあるんですよ。」

どうやら、来島記念にプレゼントを用意してくられたらしい。
私は、たった3日の滞在にもかかわらず、プレゼントまで用意してくれた村人の好意に感動しつつ、例の村人の家へと向かった。





キリバス人:「舟さん、これをどうぞ。」










イカと、、、


新鮮な海の幸だ!


お皿に載っている白いやつはイカでしょう。
じゃあ、イカの隣にある黒い物体は何だ!?










えーっと、これは。。。。(汗)










な○こ

ななななな、な、なまこーーー!!!

しかも巨大!!










ああ、何てことでしょう。
きっと、この人は朝早くから漁に出たに違いないのです。
きっと私を喜ばすために大きいナマコを探したのです。

そんな苦労をさせてしまったのは誰のせい?


僕のせい?


いや、違う。


絶対違う!!



僕は何にも悪くない!!!


だって、僕はなまこを食べたいなんて一言も言ってないですもの。
単にこの人と海に関する世間話をしただけですもの。

だから、本当に僕は悪くないんだ。
何も悪くないんだ。
こうして自分に言い聞かせていないと、私の良心が痛むのだ。


キリバス人:「どうぞお食べ下さい。」


いやいや、お食べ下さいと言われても、このナマコは食べられませんよ。
そりゃ昨日、日本ではナマコを生で食べると言いましたけど、ナマコにも色々種類があってね、これは生じゃ食べられませんよ。
私が食べるのをためらっていると、

キリバス人:「ああ。これが必要ですね。」

と、包丁をご用意下さった。
いやいや、包丁渡されてもね、このナマコは食べられませんよ。
私が切るのをためらっていると、


キリバス人:「では私が切りましょう。」


と包丁を振りかざす。


ああ、ダメーーッ!!


切っちゃダメーーーー!!!!(泣)



キリバス人:「?」



結局ナマコは海へと返され、イカは軒先に吊るされた。